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函館地方裁判所 昭和57年(行ウ)1号 判決

原告 飯塚啓三

被告 国

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  本件請求の趣旨及びその原因は、別紙訴状記載のとおりである。

それは要するに、国は昭和五七年五月一五日訴外小坂次郎に対し勲六等瑞宝章を授与したが、右小坂は函館地方裁判所執行官として執務中不動産業者又は金融業者と深く癒着、談合等を繰り返すなど、叙勲者としての適性を著しく欠くものであるから、右授与は勲章褫奪令二条一項四号により不当なものであり、したがつて小坂に対する右授与行為の取消を求める、と言うのである。

二  ところで、瑞宝章等の栄典の授与は、内閣の決定に基づきその助言と承認のもとに、国家機関としての天皇の行う国事に関する行為であるところ、これは、国家が特定の国民の栄誉を表彰する目的で行う単なる儀礼的な行為にすぎないのであつて、それ自体においておよそ国民の法律上の地位ないし権利関係に対し直接なんらかの影響を与える性質の行為ではないから、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当る行為」に該当しないし、また、純然たる第三者にすぎない原告が、右小坂に対する勲六等瑞宝章授与行為によつて、直接、あるいは間接的であれ、自己の具体的な権利又は法的利益を侵害されるはずはなく、そのような事態は到底ありえないところであるから、原告には右授与行為の違法を理由としてこの取消等を求める利益もない。

三  したがつて、原告の本件訴えは不適法であり、その欠缺は補正することができないので、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大澤巖 西岡清一郎 林田宗一)

別紙訴状〈省略〉

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